介護施設の熱中症対策を任されても、施設内のどこを測り、何から改善すべきか分からない方は少なくありません。介護施設の熱中症対策では、エアコンの設定だけでなく、居室・食堂・廊下ごとの温度差と窓から入る熱を把握する必要があります。
この記事では、介護施設の運営者に向けて、熱中症対策の調査手順と、内窓を基本に遮熱シートを組み合わせる現実的な改善方法を解説します。
※制度・商品情報は2026年8月1日時点の公式情報を基にしています。
介護施設の熱中症対策|高齢者を守る室温管理と窓の暑さ対策
2026.08.01
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このコラムで分かること
- 介護施設のどこが暑いかを調査する方法
- 窓・空調・屋根のどこに原因があるかを見分ける基準
- 内窓を介護施設の暑さ対策の中心にする理由
- 遮熱シートを内窓へ追加するときの注意点
- 居室を使いながら試験施工し、効果を測る進め方
- 職員の熱中症対策を施設運営へ組み込む考え方
目次
介護施設の熱中症対策は「暑い場所の特定」から始める
介護施設の熱中症対策で最初に行うべきことは、エアコンの設定温度を一律に下げることではありません。施設内のどこが、何時ごろ、どの程度暑くなっているかを測ることです。
同じ介護施設でも、西向きの個室、大きな窓がある食堂、空調の冷気が届きにくい廊下、高温多湿になりやすい脱衣所では環境が異なります。事務室の温度計やエアコンの表示だけを見て、介護施設全体の熱中症対策ができているとは判断できません。
高齢者は暑さを感じにくい場合があるため、本人の感覚だけでなく、実際に過ごす位置で温度と湿度を測る必要があります。環境省も、高齢者は暑さや喉の渇きを感じにくいため、温湿度計で室内環境を確認し、周囲が見守ることを勧めています。
介護施設の熱中症対策は、高齢者本人の訴えだけに頼らず、暑さが生じている建物側の条件を可視化するところから始めてください。体調不良が疑われる場合は、施設で定めた対応手順に従います。
介護施設の運営者が最初に行う4つの確認
介護施設の熱中症対策は、次の順番で進めると、熱中症対策として工事が必要な場所と、運用改善で足りる場所を分けやすくなります。
まず、個室・食堂・廊下・浴室・脱衣所など、入居者と職員が長く過ごす場所を選びます。
次に、朝・昼・西日が強い午後・夕方に室温、湿度、必要に応じてWBGTを測定します。
その後、窓際と室内中央、床付近と高い位置で数値を比較し、最後に暑さの原因を窓・空調・屋根や外壁へ分けていきます。
WBGTは、気温に加えて湿度、風、輻射熱を考慮する暑さの指標です。職員が入浴介助や厨房作業を行う場所では、2026年の職場の熱中症対策でも活用が求められています。
| 測る場所 | 比較する位置・時間 | 分かること |
|---|---|---|
| 西向きの個室 | ベッド周辺と入口側、14~17時 | 西日と窓際の熱の影響 |
| 食堂・談話室 | 窓際席と室内中央、食事前後 | 大開口と利用者集中の影響 |
| 廊下 | 車椅子で待つ位置と空調吹出口付近 | 冷気が届かない範囲 |
| 浴室・脱衣所 | 入浴前・介助中・終了後 | 高温多湿と作業時間の影響 |
| 最上階の居室 | 天井付近と窓際、夕方 | 屋根・天井と窓のどちらが主因か |
この測定結果を平面図へ書き込むと、介護施設の熱中症対策を施設全体の印象ではなく、改善箇所ごとに検討できます。測定表は夏期の熱中症対策マニュアルと一緒に保管し、毎年同じ場所を比較できるようにします。
介護施設の暑さは窓・空調・屋根に分けて判断する
介護施設の熱中症対策で窓改修を行う前に、暑さの原因が本当に窓なのかを判断します。窓の専門会社であっても、屋根や空調が主な原因であれば、内窓だけでの問題解決には至りません。
窓際だけが暑く、室内中央では暑さが弱い場合は、ガラスやサッシから伝わる熱、直射日光、西日が主な原因です。午後だけ急に暑くなる場所も、窓の日射対策を優先します。
一方、窓から離れた場所まで暑い、冷たい風は出ているのに室温が下がらない場合は、空調能力、空気循環、屋根・天井・外壁からの熱も確認します。最上階全体が暑い場合や、天井付近から熱を感じる場合は、介護施設の熱中症対策を窓だけで完結させないことが重要です。
| 現場の状態 | 主に疑う原因 | 先に行う対策 |
|---|---|---|
| 窓際だけ暑い | ガラス・サッシから伝わる熱 | 内窓を比較 |
| 午後だけ急に暑い | 西日・日射 | 内窓+遮熱シートを検討 |
| 食堂全体が暑い | 大開口、空調不足、人の集中 | 窓対策と空調運用を同時に見直す |
| 廊下だけ暑い | 冷房が届かない、空気が動かない | 空気循環と空調区画を見直す |
| 最上階全体が暑い | 屋根・天井からの熱 | 屋根・天井側を調査 |
| 窓を閉めても熱気や風が入る | サッシのすきま・劣化 | 既存サッシの修理を優先 |
この切り分けができれば、介護施設の熱中症対策に必要な予算を、効果の見込みが高い場所へ集中できます。窓の熱中症対策と空調・屋根の対策を分けて見積もることもできます。
介護施設の熱中症対策は内窓がベスト
窓から入る熱が大きい介護施設では、内窓を暑さ対策の基本として考えると良いです。
内窓は既存窓の室内側へもう一つ窓を設け、窓と窓の間の空気層と樹脂フレームによって外気の影響を抑える方法です。
介護施設の熱中症対策で内窓が使いやすい理由は、外壁を大きく壊しにくく、外窓のカバー工法より工事範囲と初期費用を抑えやすいことです。
居室を長期間閉鎖せず、暑い場所から段階的に施工できるため、施設運営を続けながら熱中症対策を進めやすくなります。
YKK APの「ウチリモ 内窓」は、集合住宅や病院・施設などの室内空間で断熱性と防音性を高める商品として案内されています。既存窓の状態や寸法によって施工可否は変わりますが、介護施設の熱中症対策として内窓を導入する際の具体的な選択肢になります。
LIXILのインプラスも、既存窓の室内側へ樹脂製の内窓を追加する方法です。商品名だけで決めず、施設の窓種、ガラス仕様、開閉頻度、必要な断熱性能まで含めて選びます。介護施設の熱中症対策では、施工後の操作性も性能と同じくらい重要です。
内窓を優先したい介護施設の場所
介護施設の熱中症対策では、入居者が長く過ごし、窓際と室内中央の温度差が大きい場所から内窓を検討します。
西向きの個室は、午後から夕方の室温上昇を抑える目的で優先度が高くなります。大きな掃き出し窓がある食堂・談話室は、ガラス面積が大きく、冷房中でも窓際席だけ暑くなりやすいため、試験施工に向いています。
また、夏の暑さだけでなく冬の寒さや結露、外部の騒音も問題になっている場所は、内窓によって複数の課題をまとめて改善しやすくなります。介護施設の熱中症対策を夏だけの一時的な支出ではなく、年間を通した居室環境の改善として検討できます。
遮熱シートは内窓へ追加する補助策として使う
遮熱シートは、介護施設の熱中症対策の主役ではありません。内窓で窓全体の断熱性能を高めたうえで、西日や強い日射が残る窓へ追加する補助策です。
午後だけ窓際の温度が上がる個室、食堂の一部だけ日差しが強い場所、大きな窓から長時間日射が入る場所では、内窓と遮熱シートを組み合わせることで、窓際の暑さをさらに抑えられる可能性があります。
ただし、遮熱シートには、ガラスへ直接貼る製品と、ガラスへ密着させず取り外せる製品があります。介護施設で既存ガラスへ直接貼る場合は、ガラスの種類と製品の適合確認が必須です。
LIXILは、窓ガラスへ断熱・遮熱や飛散防止のフィルムシートを貼ると、日射による蓄熱が増え、熱割れのリスクが高まるため、自社製品には貼らないよう案内しています。網入りガラス、複層ガラス、Low-Eガラス、日なたと日陰が部分的に分かれる窓は特に慎重な判断が必要です。
したがって、介護施設の熱中症対策で遮熱シートを採用する場合は、施設職員が市販品を一律に貼るのではなく、サッシ・ガラスメーカーと施工会社が適合を確認できる製品だけを選びます。適合を確認できない場合は、ガラスに直接貼らない着脱式の遮熱スクリーンや非密着型のシートを比較してください。
内窓と遮熱シートは場所ごとに使い分ける
介護施設の熱中症対策では、施設内のすべての窓へ同じ仕様を入れる必要はありません。
夏と冬の両方で窓際の温度差が大きい居室は内窓を優先します。午後だけ西日が強い窓は、内窓に加えて適合確認済みの遮熱シートを検討します。小さな窓で夏の日射だけが問題となる場合は、遮熱シートによる試験対策から始める方法もあります。
既存サッシにすきまや大きながたつきがある場合は、内窓を付ける前に修理を行います。内窓は既存窓の不具合を直す工事ではないためです。
| 窓の状態 | 介護施設での基本方針 |
|---|---|
| 夏も冬も窓際の温度差が大きい | 内窓を優先 |
| 西日が入る時間だけ急に暑い | 内窓+適合確認済みの遮熱シート |
| 大開口から長時間日射が入る | 内窓を基本に日射遮蔽を追加 |
| 小窓だけ夏の日差しが強い | 遮熱シートで試験し効果を測る |
| 既存サッシにすきま・開閉不良がある | 先に既存サッシを修理 |
このように、内窓と遮熱シートを二者択一にせず、介護施設の熱中症対策として現場ごとに組み合わせることが、採算と効果を両立しやすい進め方です。
内窓の施工前に介護動線と避難経路を確認する
介護施設の熱中症対策では、断熱性能だけで内窓を選んではいけません。内窓を設置すると開閉操作が2回になるため、日常の介助や非常時の避難に支障がないかを確認します。
掃き出し窓がバルコニーへの避難経路になっている場合は、職員が短時間で開けられるか、車椅子や歩行器の動線を妨げないかを確認してください。換気に使う窓では、毎日の開閉作業が過度な負担にならない窓種を選びます。
ベッド、手すり、ナースコール、カーテンレール、家具、医療機器、清掃用具との干渉も施工前に確認します。介護施設へ内窓を取り付けられることと、設置後も安全に運用できることは別の判断です。熱中症対策のための工事が、避難や介助の妨げにならないようにします。
介護施設の熱中症対策として内窓を導入するときは、施設長や設備担当者だけでなく、実際に居室を使う介護職員、清掃担当者、防災担当者にも計画を確認してもらうと、施工後の使いにくさを減らせます。
全館改修ではなく試験施工から始める
介護施設の熱中症対策として、最初から全館の窓を改修する必要はありません。暑さが強い代表的な場所へ内窓を試験施工し、効果を測ってから同じ条件の居室へ広げる方法が現実的です。
例えば、西向きの個室2室と食堂の一部へ内窓を設置します。施工前後で、14~17時の窓際と室内中央の室温、湿度、WBGT、冷房の運転状況を比較してください。
数値だけでなく、窓際席の移動が必要だった回数、カーテンを追加で閉めた回数、職員が冷房調整へ対応した回数も記録すると、施設運営上の効果を判断しやすくなります。
試験施工で熱中症対策の効果が確認できれば、同じ方角、同じ窓仕様、同じ階の居室へ展開します。効果が小さい場合は、窓以外の原因を再調査してください。
この進め方なら、介護施設の熱中症対策を感覚で判断せず、投資額に対してどの程度の改善が得られたかを施設内で説明できます。次年度の熱中症対策予算を決める資料にもなります。
窓で改善しない暑さは空調・屋根・外壁を確認する
内窓を設置しても介護施設全体が暑い場合は、空調能力、換気、屋根や外壁からの熱を確認します。
冷房の風が届かない廊下や共用部は、内窓より空気循環や空調区画の見直しが先です。最上階全体が暑く、窓から離れた場所でも天井から熱を感じる場合は、屋根や天井断熱の調査が必要です。
厨房や浴室・脱衣所は、窓だけでなく調理熱、蒸気、換気設備、作業時間が暑さへ影響します。介護施設の熱中症対策を窓だけで解決しようとすると、工事後も暑さが残る可能性があります。
窓際の温度差が大きい場所は窓断熱、施設全体の温度が高い場合は空調・屋根・外壁というように、介護施設の熱中症対策の範囲を分けてください。
職員の熱中症対策は施設運営の手順へ組み込む
介護施設の熱中症対策は、入居者だけでなく、入浴介助、厨房、送迎、屋外清掃などを行う職員にも必要です。
2025年6月から、WBGT28以上または気温31℃以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間を超えて行うことが見込まれる作業について、熱中症のおそれがある職員を早期に見つける報告体制と、重篤化を防ぐ手順の整備・周知が事業者へ義務付けられています。2026年の厚生労働省のキャンペーンでも、WBGTの把握と職場での予防対策が継続して求められています。
介護施設では、入浴介助や厨房など高温になりやすい場所を測定対象へ入れ、職員交代、休憩場所、報告先を決めます。医療的な処置の詳細ではなく、誰が異常を報告し、誰が作業を交代し、どの手順書を確認するかを明確にすることが施設運営者の役割です。
この職員向けの熱中症対策と、窓際の室温差を減らす建物対策を同じ施設管理表で扱うと、介護施設のどの場所に負担が集中しているかを把握しやすくなります。
介護施設の熱中症対策を進める実行手順
介護施設の熱中症対策で何から始めるべきか迷う場合は、次の流れで進めてください。
- 施設内で暑いと感じる場所を職員から聞き取る
- 個室・食堂・廊下・脱衣所を時間帯別に測定する
- 窓際と室内中央の温度差を平面図へ記録する
- 窓・空調・屋根のどこが主な原因かを分ける
- 西向き個室や食堂へ内窓を試験施工する
- 必要な窓へ適合確認済みの遮熱シートを追加する
- 施工前後の室温・WBGT・対応回数を比較する
- 効果が確認できた場所と同じ条件の居室へ広げる
介護施設の熱中症対策は、商品を先に決めるのではなく、測定、原因診断、試験施工、効果確認の順番で行うことが重要です。
介護施設の窓対策で避けたい失敗
エアコンの設定温度だけで安全と判断する
設定温度と入居者が過ごす位置の室温は同じではありません。介護施設の熱中症対策では、窓際、ベッド周辺、車椅子で待つ位置を実測してください。
内窓を全館へ一度に設置する
暑さの原因が空調や屋根にある場所へ内窓を付けても、期待した熱中症対策の効果が得られません。代表的な場所で試験施工を行い、効果を確認してから広げます。
遮熱シートをすべてのガラスへ貼る
ガラス仕様によっては熱割れのリスクがあります。介護施設の職員が市販品を自己判断で貼らず、適合を確認してください。
介護動線や避難を確認せず内窓を付ける
車椅子動線、ベッド、手すり、カーテン、避難経路と干渉すると、施設の運用へ支障が出ます。現場職員を交えて施工前に確認します。
窓だけで施設全体の暑さを解決しようとする
空調能力、換気、屋根、外壁、厨房や浴室の熱が原因なら、窓だけでは改善しません。介護施設の熱中症対策は、建物全体の原因を分けて進めてください。
介護施設の熱中症対策に関するよくある質問
介護施設ではどこから測定すればよいですか?
入居者が長く過ごす個室と食堂、西日が入る場所、冷房が届きにくい廊下、入浴介助を行う浴室・脱衣所から始めます。窓際と室内中央、朝と午後を比較してください。
内窓を設置すれば介護施設の熱中症を防げますか?
内窓だけで熱中症を完全に防ぐことはできません。ただし、窓から伝わる熱を抑え、冷房した室温を保ちやすくするため、介護施設の熱中症対策として有効です。空調運用、測定、職員の見守りと組み合わせます。
遮熱シートは職員が貼ってもよいですか?
ガラスへ直接貼る製品は、自己判断で施工しないでください。ガラス仕様や日射条件によって熱割れのリスクがあるため、メーカーや施工会社へ適合を確認します。適合が分からない場合は、非密着型や着脱式の製品を比較してください。
外窓カバー工法は検討しなくてよいですか?
介護施設の熱中症対策では、費用と工事範囲を考え、まず内窓を比較する方が現実的です。ただし、既存サッシの腐食、すきま、開閉不良が大きく、修理できない窓は、窓全体の交換が必要になる場合があります。
内窓の効果はどのように確認しますか?
施工前後で、同じ時間帯の窓際と室内中央の室温・湿度・WBGTを比較します。冷房設定、外気温、カーテンの状態など、条件も記録してください。職員の追加対応が減ったかも確認します。
まとめ|介護施設の熱中症対策は測定と内窓から始める
介護施設の熱中症対策は、入居者と職員が過ごす環境を施設側で改善することから始まります。
まず、個室・食堂・廊下・浴室・脱衣所のどこが、何時に暑くなるかを測り、窓際と室内中央の温度差を把握してください。窓際だけが暑い場所には内窓を熱中症対策の基本とし、西日や強い日射が残る窓へ適合確認済みの遮熱シートを追加します。
介護施設の熱中症対策として、すべての窓を一度に改修する必要はありません。西向きの個室や大きな窓のある食堂へ試験施工し、室温・湿度・WBGTと職員の対応回数を比較してから、同条件の居室へ広げる方法が現実的です。
内窓で改善しない場所は、空調、換気、屋根・外壁からの熱を調査し、熱中症対策の方法を切り替えます。介護施設の熱中症対策を窓だけの問題と決めつけず、窓で改善できる範囲を正確に見極めることが重要です。
内窓・遮熱シートのどちらをどの場所へ使うか判断できない場合は、窓の方角、窓際と室内中央の温度、暑くなる時間帯、既存ガラスとサッシの写真を整理すると、必要な対策を絞り込みやすくなります。
